消印

一年後の自分へ


また会いましたね、私です。

もうこれ初めて3年目か。
就職したと同じ時期に、恋に浮かれてやってみたものの、3年という月日で、私は本当に大きく大きく変わったなあと思います。
特にこの1年は凄かった。
結局あなたは静岡の藤枝市に転勤させられた。一人暮らしのいい機会でした。生きることの厳しさを知る反面、自由の喜びを知り、そして両親の愛情の形を知り、そこから色々な愛情の形が存在することを知りました。
父もマリンも手術をする大病を患い、母と同じく命が一瞬で吹き消えてしまうかもしれない恐怖を覚えました。明日、会えない可能性が今を輝かせると。
だから今生きている事実があまりに尊い。

あなたは、今という時間を真剣に生きています。
いや、生きられるようになりました。
自分に厳しく、未来志向で、過去を悔やみながら必ず未来に活かそうとタスクをクリアする生活を繰り返そうとしたがる。そんな自分の毎日の中には、常に今を尊ぶ視点はなかった。私の今はいつも途中経過で、未完成で、足りない。
あなたはだから苦しかった。今がいつもかけていて、満足する日がいつなのかと道の遠さに悲しくなり、疲れが溜まれば無気力におちいる。
感情の流し方も下手くそです。自分の感情を徹底して生活から切り離そうとばかりするから、虚無感が募り、怒りが時折爆発し、手がつけられなくなる。
人に対して向ける感情も、剥き出しで、大きく、激しい。

そりゃあ疲れますよ。感情の幅が大きいのに、それを扱うのはど下手くそ。
言うなればあなたは激流が氾濫しているのに、それを無視して河原でずっと走ろうとしている。頭のどこかに川の氾濫がわたしを飲み込むのではという恐怖があり、走って走って逃げようとしても、川沿いを走り続けているだけ。

今のあなたは、川の氾濫を見つめて立ち止まることもできるし、ある程度氾濫をコントロールできるようになりました。溢れ出すカップの水をどうすればいいのか、ぎこちなくも手腕を巡らせて尽くしている。
自分を愛して、自分の川の汚泥さえ愛し、許し、受け入れている。
そうすることで、憧れだった「人に知性を持って、それぞれの人にあった距離で優しくあること」という形が、少しずつ少しずつ出来上がってきています。
まだ激流の速さに焦る日がありますが、まぁすこーしずつすこーしずつ、ペースを落としていけばいい。
今月は食事方法や人との対話の中で、その練習ができそうです。何せ足を怪我してしまって、急いだりが物理的にできないんですよ笑

今の話ばかりですね。
じつは今回の手紙には、届けたいことはありません。
あなたは今泣いても笑っても受験生です。どの志望校に結局なったのかは今はまだぼんやりしているけど、私は1年後のあなたが戦いの切符と武器を揃えていることを信じています。
勝てるかどうか、ではなくきっと勝つでしょう。あなたは本来そういう勝負には強すぎる人です。
だから、何かを届けるより、1年前の今の自分と、1年後、現時点でのあなたがどれだけ変わったかをちょっと考える時間をこの手紙を読む時間として欲しい。

あなたは、1年前と比べ、感情の扱いが本当に本当に上手くなってきている。自分を愛することが上手になったとも言えるかもしれません。喜び悲しみ、楽しみ憎しみ、全ての感情を、今の私は一瞬だけ躊躇しつつでも飲み込んで、さてではどうしようかと冷静に選択ができる。
感情を一時的に抑えることもできる。
何よりすごいのは、変化した感情に対して冷静で客観的であれる。勿論人間ですから、暴発した感情の勢いでやらかすことがあります。でもやらかしてしまうことより、やらかした自分に対して冷静に内省が出来ることの方が、今の私にはうん万倍重要な気がするのです。
母のなんでなんで教育の賜物です。ずっと苦しかったけど、ようやくこの教育が大輪を咲かせたようです。私の宝となりました。母には本当に感謝してなりません。

自己の考察や内省は、苦しいものです。自分という未知ほど、怖いものはないかもしれない。
様々な経験から、色々な自分が顔を出します。意外と腹黒いことを考えたり、ズルをしたくなる私だって出てきます。その度に驚いたり、そんな自分に振り回されやしないかと怖くなる。
でもそれをするかどうかという選択ができる。これがおそらく内省の良さ、言い換えると知性という優しさです。
感情は感情のままに、流れていい。でも現実に現すかどうか、そしてどう現すかを選ぶこともできるのです。
感情と現実の狭間で色々な選択肢の行動を選択でき、その中で最も自分も周囲も納得し安心できる中間点を見つけること。

これがあなたの今の理想です。色々な選択肢は経験や人の助力、読書などで広げながら、感情のコントロールをして母から受け継いだ知性で選択をし、人々と自分に優しくあること。導き手となるかはわからないけれど、全員が前進し、かつ今に安堵できる選択は必ずあると信じているのです。
これを一人で全部抱えようとしないのもキーポイントかなと今は思います。

なんだか自己考察が捗ってきました。
実は1年後どうなっているか楽しみだけど、良くなっているだろうという信頼感もあって、あんまり興味や執着もないのが事実です笑

夢といえば、海外に行って色んな人や物事を知りたいです。この願いも私の夢です。心理学者、カウンセラーになる他に、夢が一つ増えました。できればその国の食べ物を食べて作ってとかもしたいですね。
今料理にハマってます。ピアノも本当に時々だけど弾いて楽しんでいます。
丁寧に作ると、食べる時も丁寧に向き合うのだから不思議です。


あ、ひとつだけ届けたいことができました。
あなたは今受験生です。肩に力が入りすぎて、苦しくてしょうがないときは、何に恐れと執着を抱いているかを探してみると良いでしょう。
答えも、幸せも、いつも実はとんでもなく近くにあります。視界を一点に絞るほどに、それは見えづらくなる。
そういう時は距離を空けるのです。
どんな方法だっていい。あなたはその手段がどれだけでも思いつく人です。散歩に行くんでも掃除するんでも、ピアノを弾いてみるでもノートに考えを書き出してみるでもいい。
今のあなたは今より人をうまく信頼できている気がします。だから多分人に相談することも容易でしょう。視野が狭くなったなと思ったら、人に見えていないところを教えてもらって助けてもらってもいいんです。「ごめんね」より、「ありがとう」と言われた方が嬉しいように、人は人に助力をこわれそれを喜んでもらえれば嬉しいと感じるものです。(勿論その人の状況によりけりですよ?)

届けたいことは以上です。
もうそんなのわかってるよ!って怒ったりするのかな。じゃあできない理由があるなら、それも自分の中にありますよ。
全ての答えは今の中にある。日々の生活、手に取ったものの感触、風の香り、空気清浄機の音、煮豆の味、そういうものの中に桃源郷はあるんだろうと、今の私は感じます。
ずっとそうやって生きるのも難しいし、まぁ多分無理なんでしょうけどね。できたら仙人ですよ。山行こう山。

理想と今のバランスを取ることはとても難しい。今を手放せば進めないし、理想を手放せば方向性を見失う。
理想に向かう道筋はいつも結構予想外だったりします。もしかすると過程をあまり重要視しないことがヒントかもしれないですね。そして過程を重要視しないなら、どういう生活が自分の理想かの中核が余計大事になってくる。

長くなってきました。
さて、そろそろ私も今に戻ります。
1年前と今の自分を比べる時間になりました。そして1年後を考える時間になりました。
こうやって時々振り返ったり、未来を想像したりするのはいいものです。でも時々でいい。疲れる笑

あまり無理せず。あなたは常に全力で絶対頑張れているんです。周りの人がそれこそドン引くようなやり方で。
大人になると褒めてくれる人が減るのは、自分も同じです。
あなたは本当に頑張っています。
毎日毎日を、日々是好日として懸命に生きている。
あなたの生命は力強く強靭な輝きを放ちます。
だからあなたはすごいのです。
時々は美味しいスイーツなんかも食べに行きましょうね。

それじゃあ、私も勉強頑張ります。